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山吹の花と兼明親王の和歌
急な雨に見舞われた大田道灌、山里の農家に蓑を借りようとした際のこと
その家の娘が山吹の花一枝をそっと差し出したという有名な話
山間(やまあい)の茅葺きの家であり貧しく蓑(実の)ひとつ持ち合わせがないことを
奥ゆかしく答えたのだ

 蓑笠とは、蓑と笠ということなのだろうが、茶を習い始めた頃私には想い出がある
蓑笠も菅笠も三度笠も似たようなもの、まして露地笠を初めて見た時のことである
梅雨時期なので、茶事には笠を準備するようにと「三度笠」を渡されたのだが
この三度笠はアゴ紐が無いので、どうするのかと訝しく思って先代宗匠に訊ねたら
「これは露地笠というもので、両手で前と後ろ持つもので、アゴ紐はないのだよ」
そして、露地笠を「こうするのですよ」と自ら見せてくださった
良く見ると、笠の前先に半釣り輪の様に紐が掛けられてあり、成程と納得した
「晴れていても、笠の準備はしておくもので、まして梅雨時期の心掛けですよ」
その時の先代宗匠が云われた言葉と姿が、この時期になると思い出される


 六月一二日、今日は先代宗匠の命日、没年は平成一〇年、亨年八二歳
物静かで、穏やかで、常に優しい目で注意されていた
「指を開きたるは、口を開きたるに似たりと云いますよ」
「出す時は早めに、引く時はゆっくり、恋人と別れを惜しむが如しです」
「立つ時は煙が立ち上る様に、坐す時は音を立てずに」等々


 今年は空梅雨模様であるが、笠の用意もしておきたいと思うが出来ない
それは、私は露地笠を持っていない為である、その理由とは露地が狭いこと
朋庵の露地はまさに坪庭然としており、且つ軒先が長く、雨に掛らないのだ
要は、一坪の茶室と一坪の露地では雨に掛るスペースもないのである
然り乍ら、毎年、ハッキリと心眼で露地笠の稽古をさせてもらっている

 先に書いた、お会いしたこともない奈良の町長屋の茶の師匠の命日は六月六日
そして、当流の先代宗匠の命日は六月一二日、お二人の没年は同じ平成一〇年
違うタイプのお二人であるが、私には心で何かが重なって来る思いがある
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