11images.jpg
穴澤利夫少尉の婚約者・智恵子さん宅に置かれた遺影と寄木小箱
小箱の中には穴澤少尉が口にした煙草の吸殻一片が大事に仕舞われている
智恵子さんにとっては、婚約者だった穴澤少尉を偲ぶ唯一の形見だとか

1t02200268_0328040010371259880.jpg
特攻出撃に整列する隊員、一番手前が穴澤利夫少尉
婚約者・智恵子さんが編んだマフラーを特攻マフラーと共に首に巻いている

先の特攻隊を「さくら」を振って見送る写真、出撃した穴澤少尉には婚約者が居た
智恵子さんという方でご存命であった、上の写真の後ろ姿の方である
穴澤少尉の遺書を読み、私は胸が詰まった
やはり、卒業ソングとされる「さくら」は、特攻の歌である方がより相応しいと思った

穴澤利夫少尉(二十三歳) 遺書

 二人で力を合わせて努めて来たが終に実を結ばずに終わった。
希望も持ちながらも心の一隅であんなにも恐れていた“時期を失する”という
ことが実現して了ったのである。

 去月十日、楽しみの日を胸に描きながら池袋の駅で別れたが、帰隊直後、
我が隊を直接取り巻く情況は急転した。発信は当分禁止された。
転々と変えつつ多忙の毎日を送った。
 そして今、晴れの出撃の日を迎えたのである。
便りを書きたい、書くことはうんとある。

然しそのどれもが今迄のあなたの厚情に御礼を言う言葉以外の
何物でもないことを知る。

 あなたの御両親様、兄様、姉様、妹様、弟様、みんないい人でした。
至らぬ自分にかけて下さった御親切、全く月並の御礼の言葉では済み切れぬ
けれど「ありがとうございました」と最後の純一なる心底から言っておきます。

 今は徒に過去に於ける長い交際のあとをたどりたくない。
問題は今後にあるのだから。
 常に正しい判断をあなたの頭脳は与えて進ませてくれることと信ずる。
 然しそれとは別個に、婚約をしてあった男性として、散ってゆく男子として、
女性であるあなたに少し言って往きたい。

  あなたの幸を希う以外に何物もない。
  徒に過去の小義に拘るなかれ。あなたは過去に生きるのではない。
  勇気をもって過去を忘れ、将来に新活面を見出すこと。
  あなたは今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。

  穴沢は現実の世界にはもう存在しない。
極めて抽象的に流れたかも知れぬが、将来生起する具体的な場面々々に活かしてくれる様、
自分勝手な一方的な言葉ではないつもりである。
純客観的な立場に立って言うのである。

 当地は既に桜も散り果てた。大好きな嫩葉の候が此処へは直に訪れることだろう。
 今更何を言うかと自分でも考えるが、ちょっぴり欲を言って見たい。

 1、読みたい本
  「万葉」「句集」「道程」「一点鐘」「故郷」

 2、観たい画
  ラファエル「聖母子像」、芳崖「悲母観音」

3、智恵子
会いたい、話したい、無性に。

・・・今後は明るく朗らかに。
自分も負けずに朗らかに笑って往く。

昭和二十年四月十二日

智恵子様
                      利 夫


スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://houan7010.blog.fc2.com/tb.php/645-764bbeab